デルコスカレー・ガネーシャ店長

第一話|インドカレー、あの味を再現したい!

故郷で大好きだったレストラン
あの味を日本で再現したい

はじめまして。
「インドレストラン デルコス 八王子本店」で店長を務めるガネーシャです。
日本に来たのは2007年。
はじめは、東京・笹塚にあるインド料理屋さんで働いていましたが、その後、ご縁があって「インドレストラン デルコス 八王子本店」の開店と同時に、こちらへ移動してきました。
ここで働き始めて、いま、9年めになります。

僕は、北インドのデヘラードゥーンという街で育ちました。
デヘラードゥーンは、インド北部にあるウッタラーカンド州の州都。
ウッタラーカンド州は、チベット自治区にも隣接する、ヒマラヤ山脈のふもとの州です。
インドは29の州と7つの連邦直轄領で構成されていて、各州には自治権が認められています。
州によって特色がとても豊かで、州が変わればことばも、食べものも、ファッションも変わるといっていいくらい。
州の境目を電車やバスで超えると、まったく違う国に来てしまったかのように、不思議な異国情緒を感じます。
僕が育ったデヘラードゥーンは、ウッタラーカンド州のなかで最大の都市で、街には空港もあります。空港といっても、日本の地方空港をもっと小さくしたくらいのサイズですが、街はそれなりに賑わっていて、僕はこの街で、28歳まで育ちました。

インドの街並み

巡礼の地から

育ったのはデヘラードゥーンですが、僕が生まれたのは、デヘラードゥーンからもっと北にあがった、テヘリーという街。
街というか村がちょっと大きくなったくらいのサイズですが、ヒンドゥー教徒にとってはとても重要な場所です。なぜかというと、ヒンドゥー教徒なら誰もが夢見る巡礼の旅の起点となる場所だから。
ヒンドゥー教徒の人たちは、みんな、人生で一度は「4大聖地」に行きたいと願っていて、それらをめぐる巡礼の旅に出ることは、最高のしあわせとされています。
「4大聖地」とは、ヤムノートリ、ガンゴートリ、ケダルノート、バドリナートの4つで、いずれもウッタラーカンド州にあります。
これらはすべて標高3,000メートルを越えた山地にあり、冬の間は大雪が降り、道が閉ざされてしまいます。だから、巡礼客が訪れることができるのは、毎年、5〜10月ごろの間だけ。
でも、その時期はあいにくインドの雨季にあたるので、大雨が降ればたちまち山道はがけ崩れを起こし、道が封鎖されてしまうのです。
ときには、巡礼客を乗せたバスが落石にあい、谷底へ転落してしまうことも。
それでもヒンドゥー教徒にとって、4大聖地に向かう途中で命を落とすことは、最高の至福とされていて、それだけ神様に近づくことができると考えられているのです。

僕がもともと生まれたテヘリーは、そうした巡礼客がたくさん訪れるところ。
インド全土から多くの人が訪れて、聖地への旅に出かけます。なかにはバスなどの交通機関を使わず、何十日もかけて、すべて徒歩で登る人もいて、巡礼シーズンには、街が異様な熱気で包まれます。

僕は日本で働くようになって、日本人の友達もたくさんできました。
彼らと親しくなるにつれ、僕は日本人ならではのやさしさや思慮深さを実感するようになりました。
そうした点は、インド人にも通じるところがありますが、ひとつ、日本人とインド人が大きく違うなと感じるのは、宗教に対する捉え方です。
もちろん、同じインド人でもヒンドゥー教徒だけでなく、イスラム教徒やキリスト教徒、仏教徒など、みんな、それぞれの宗教を信じています。
そのなかで、僕の家族は当たり前のようにヒンドゥーの神様を信じ、神様に恥ずかしくない生活をして、毎日一生懸命お祈りを捧げてきました。
僕らは毎朝、目を覚ますと、必ず神様にお供えをして、お祈りをします。
それを済ませたあと、僕らは1日をスタートするのです。

デルコスのインドカレー

デヘラードゥーンのインドレストラン

インドでは、人口の半数以上がベジタリアンです。
宗教的な理由や、健康上の理由などから、肉や魚を一切食べません。
では、何から栄養をとっているかというと、豆や野菜。
とくに、インドでは豆の種類が豊富で、どの家にもたいてい5〜10種類近くの豆を常備していて、料理によって使い分けています。
なかには日本人におなじみの、チャナ(ひよこ豆)、ラジマ(キドニー豆)、ムング豆(緑豆)などもありますが、インド料理で使われる豆はこれだけではありません。小さなものから大粒のものまで、いろいろな豆を使いこなしてこそ、"一流のお母さん"になれるのです。
僕も、実家にいる時は、母が作った料理をよく食べていました。
インド人は一般的に、あまり外食する習慣がありません。
僕たちがなによりも好きなのは、「ガル・カ・カーナー」。ヒンディー語で「家のごはん」という意味です。
決して豪華ではないけれど、お母さんが作ってくれる馴染みの味が、僕たちはとても好きで、安心して食べることができるのです。
学校へ通っていたときには、毎日、お母さんが作ってくれたカレーやチャパティをつめたお弁当を持ってでかけましたし、会社で務めるようになっても、お弁当を片手に出かけるのは同じ。
オフィスのランチタイムでは、お弁当デリバリーのひとたちがとても活躍しています。
彼らは毎日、昼前になるとあちこちの家庭にお弁当を取りに行き、それぞれのオフィスに届けるという、重要な役割を果たしているのです。
決して街なかにレストランがないわけではありませんし、流行っているお店もたくさんあります。
でも、インド人にとっていちばん好きなのは、「家のごはん」で、誰にでも、忘れがたい「おふくろの味」があるのです。

僕も、お母さんが作るインド料理が大好きでした。
特に「ダル」という、豆を使ったカレーが大好物。これは、日本でいうお味噌汁みたいなもので、毎日の食卓に欠かせないものです。
日本のお味噌汁が、家庭によって味付けがちょっとずつ異なるように、インドのダルも、家庭の味がとても強くあらわれます。
ちょっと塩気が強い家庭や、スパイスが効いた家庭。
それから、西インドのグジャラート州では、このダルに砂糖を入れて甘くするのが定番なので、もしお母さんがグジャラート州出身なら、その家庭のダルは、甘みが効いているかもしれません。
家庭で食べるのは、こうしたダルのほか、1〜2種類のサブジとチャパティ。
サブジとは、野菜をスパイスなどで調理した料理の総称で、カリフラワーやじゃがいも、オクラ、玉ねぎなどいろいろな野菜が使われます。それらの野菜を蒸したり、炒めたり、煮たりして、スパイスと塩で味付けしたサブジは、インド人の大好物。
僕ももちろん、お母さんが作るサブジが大好きでした。

でも、誰かの誕生日とか、新年とか、ちょっとおめでたいときには家族みんなで外食して、スペシャルな時間を楽しむこともありました。
そんなとき、僕らの家族が出かけたのは、デヘラードゥーンの街なかにあるレストラン。
決して高級な店構えではなく、レストランというよりは、食堂という感じだけど、いつもたくさんのお客さんで賑わっていて、どれを食べてもフレッシュでおいしかったのです。
特に、僕がいちばん好きだったのが、バターチキンカレーとバターナン。
僕の家庭は、みんなノンベジタリアンだったので、チキンやマトンなどの肉も食べます。
このお店のバターチキンカレーは、バターや生クリームをふんだんに使って、とてもリッチな味わいなのに、スパイス使いが絶妙なためか、決してコッテリしすぎないし、胃もたれもしない。
最後のひとさじまで、とてもおいしくいただけるのです。
それから、タンドール窯でしっかり焼き上げた熱々のナンに、たっぷりバターを塗ったバターナンも絶品のおいしさ!
よく誤解されがちなのですが、普段、インド人はナンをあまり食べません。
「ナンを食べるとすぐに満腹になってしまう」といって、普段はチャパティという、発酵させていない薄焼きのパンを食べています。
これはこれで素朴な味わいがとても魅力的なのですが、やっぱり、手間と時間をかけて発酵させた焼きたてのナンは、一味もふた味も違います。
このナンを手でちぎり、クリーミーなバターチキンカレーのなかにどっぷり浸し、口に運ぶ瞬間といったら……!
滅多にしない外食だからこそ、このおいしさが格別に感じられるのだと思います。

いま、僕が「インドレストラン デルコス 八王子本店」で作っているバターチキンカレーやバターナンは、あのお店の料理をモデルにしています。
僕はデヘラードゥーンに帰省するたび、インド産のスパイスを仕入れて日本へ帰り、それを使って、あの味を思い出しながら料理をします。
寸胴鍋を覗き込みながら、僕の頭のなかには懐かしいデヘラードゥーンの街並みが蘇ります。
さわがしいクラクションや、道端で立ち止まる野良牛の群れ。
縦横無尽に道を横断するインド人や、抜けるようにまっさおな空。
そんな景色を思い浮かべながら、僕は、八王子の街なかで、いつもカレーを作っています。

インタビュアー:シャンティ・ヨガンヌ

デルコス八王子本店

年中無休

<イートイン>
【ランチタイム】
 11:00~17:00(L.O. 16:30)
【ディナータイム】
 17:00~22:30(L.O. 22:00)

<テイクアウト>
【ランチタイム】
 11:00~17:00(L.O. 16:30)
【ディナータイム】
 17:00~22:30(L.O. 22:00)

<UberEats>
 11:00~22:00

お得なランチ、ディナーセット、パーティープランもあります。
テイクアウト、企業向けデリバリーも承ります。

木のぬくもり感じる、アットホームなインドレストラン
JR北八王子駅から徒歩5分。国道20号線の大和田坂上交差点角にある八王子本店は、ゆったりくつろげる雰囲気が特徴です。店内は、テラス席を含め55席。おひとり様から大人数でのパーティまで、幅広く対応しています。

アクセスマップ

所在地 デルコス八王子本店|〒192-0033 八王子市高倉町1-10-1F
連絡先 042-648-5227|FAX. 042-660-5739