第三話|デルコスがインド弁当を作る理由
日本のお弁当が、いま、世界で注目を集めています
日本のお弁当が、いま、世界で注目を集めています。
もともと海外では、日本のお弁当のように、ご飯やおかずを一つの箱に詰めるという文化がありませんでした。出先での昼食には、サンドイッチやハンバーガーなどを持ち歩いたりするのが普通ですし、子どもが学校へ持っていくランチボックスも、サンドイッチ、果物、それからポテトチップスやビスケットなどを紙袋へざっとつめただけという、簡単なもの。
だから、海外から日本へやってきた外国人は、きれいに詰められた日本のお弁当を初めて見たとき、非常に驚くのです。僕自身もそうでした。
とはいっても、実は、インドにもお弁当があります。
もちろん、お弁当という名前ではありませんが、外食文化がそれほど栄えておらず、1日3食、お母さんや奥さんが手作りした料理を食べるのが当たり前というインドでは、当然、会社や学校へ出かけるお父さんや子どもたちも昼食を持参します。
しかし、これが大問題。
なぜかというと、お父さんや子どもたちが家を出る時間までに、お母さんや奥さんが昼食を支度するのが間に合わないのです。特に、ムンバイなどの大都市では人口密度が高く、地価も高騰しっているので、職場や学校から遠く離れた郊外でなければ、人は住むことができません。
だからとても早く家を出ることになるのですが、そうなると今度はお母さんがお弁当を準備することができない。
そこで活躍するのが、「ダッバーワーラー」【YouTube:動画はこちら】です。
ダッバーワーラーとは、お弁当の配達屋さん。「ダッバー」とはインドでよく使われる金属製の弁当箱のこと、「ワーラー」とは「?をする人」という意味の言葉。つまりダッバーワーラーとは、簡単にいえば「お弁当屋さん」です。
彼らは午前中に契約している家々を周り、各家庭からお弁当を集め、お昼までにお父さんたちへ届けます。
ダッバーはまるでおせち料理のように、いくつかの箱が積み重なっていて、一つ目の容器にはご飯、二つ目にはカレー、三つ目にはきゅうりや玉ねぎ、トマトなどの野菜、というように、容器ごとに異なるものが入れられています。
それらを積み重ね、ズレないように金属製のクリップで止めるのですが、初めてダッバーを見たひとは、「カレーみたいに水っぽいものを容器に入れて、漏れないの?」って心配になるでしょう。特に、ほとんどのダッバーワーラーは自転車を漕いで会社などを周っていて、ときには悪路を走ることも。「ガンガン揺れたらカレーがこぼれちゃうんじゃないの」と、不安になりますよね。
でもインド人のダッバーは、カレーを運ぶのに最強。まったくこぼれず、運ぶことができるのです。