インドは日本の面積の約9倍にものぼる広大な国。
これだけ広ければ、地域によって料理の味付けが変わるのも当然と言えるかもしれません。
「インドレストラン デルコス」で働くインド人シェフは、みんな、北インドの出身です。
だから、「インドレストラン デルコス」の料理は、基本的に、北インド料理です。
では、北インド料理っていったいなに?
その特徴を簡単にいうと、コッテリ濃厚で、味わいが深いこと。
北インドとは、首都のデリーやヒマラヤ山脈、有名なタージマハルやガンジス川流域のエリアです。
このあたりは、意外に思われるかもしれませんが、実は、冬はとても寒い。日本の冬と同じくらいか、それ以上に冷え込む地域です。
だから、料理に油を多めに使い、牛乳や生クリームを加えてコッテリ濃厚にして、体に熱を閉じ込めるようにしているのです。
ただし、「コッテリ濃厚」といっても、「胃もたれする」とか「太る」とか、そういうわけではありません。スパイスが織りなす複雑な風味が、油や乳製品と合わさって独特の味わいを醸し出し、まさに、「インド料理の王道」といったおいしさです。
昔、インドのあちこちで栄えた王朝のキングたちも、こうした料理を好んで食べていました。
それから、北インドではお米をあまり食べず、一般に、小麦粉を練って焼いた「ナン」や「チャパティ」と呼ばれるものを食べます。「ナン」は、日本人にもおなじみですね。ふっくら、モッチリ焼き上げた、巨大なパンのような食べものです。
「チャパティ」はナンほどふっくらしていない、もっと薄くてまん丸のパン。インドの家庭では、毎日、お母さんがこのチャパティを焼いていて、ちぎってカレーにつけたり、お惣菜を巻いたりして食べるのが一般的です。材料は、小麦粉と水だけと、とてもシンプル。だからこそ、焼き具合や、粉と水の配分などに、家庭ごとの違いがあらわれやすいのです。
一方、南インド料理の特徴は、「サラサラ」「シャバシャバ」していて、北インド料理に比べて水分が多いこと。
日本のお味噌汁くらいのサラサラ感といえば、わかりやすいかもしれません。そして、このカレーをナンやチャパティではなく、お米にかけて食べます。
お米は、日本のものと違って、粒が長いバスマティライスが一般的。カレーをお米にたっぷりとかけ、それを右手の指先で混ぜ、口に運びます。だから、カレーを食べたあとの指先は、いつまでもスパイスの香りがして、その香りだけで、もう1杯ご飯が食べられるくらい。
北インドに比べて、南インドではスパイスをたっぷり使うことが多いようです。なぜ、南インド料理がサラサラしていて、口当たりがあっさりしているのかというと、気温が高いから。
夏になれば、50度近くまで上がることも珍しくなく、冬でもそれほど気温が下がりません。だから、油や乳製品で体を温める必要がなく、暑い時でもするするっと胃に収まりやすいよう、サラサラしたカレーが好まれているのです。
「インドレストラン デルコス」の料理は、北インド料理が基本。
なぜなら、ここで働くシェフはみんな、北インド出身だからです。
みんながインドで暮らしていたとき、当たり前のように食べていた家庭の味をベースにして、それぞれが有名レストランなどで修行を重ね、独自のおいしさを作り上げています。
もちろん、ほんのちょっと、日本人に向けてアレンジを加えたポイントもあります。
でも、それはインド料理の特徴を損なうのではなく、かえって、おいしさに磨きをかけるエッセンスになっているのです。